「密着レポート:メインテナンスで重要なのは「会話」!ただのクリーニングではない、その人に合わせたプロフェッショナルケア」
メインテナンスや定期検診で、他の人はどんなケアを受けているのでしょうか?そんな疑問にお答えするため、今回は受験を控えた高校3年生のAちゃん(メインテナンス歴14年)と、あおき矯正歯科に23年間勤めるベテラン歯科衛生士の町田のメインテナンスの一日に密着しました。取材を通して「真の予防は、その人の現状に合わせたプロフェッショナルケアと、生活に無理なく取り入れられるホームケアの提案にある」ということを強く実感しました。
メインテナンスの基本の流れはありますが、現在の生活環境や状態で臨機応変に変更しています。
まずはメインテナンスの基本の流れを簡単に紹介いたします。前回問題があったときや、いつもより歯肉が腫れているときなどは優先順位が変わります。的確な予防処置を行うことが大切です。
- 問診・・今気になっていることなどを聞きます。
- 染め出しと自分磨き・・きれいに磨けているときは割愛することも。その分、鏡でお口を一通り見てもらいます。
- コントラ、エアブラシでもクリーニング・・歯科専用の機械を使ったプロフェッショナルケアを行い、磨き残しの清掃や、歯の溝の奥まできれいにします。
- 口腔内スライド撮影、むし歯・歯肉炎のチェック・・規格に沿った写真を撮影する事によって、変化が一目瞭然です。
- ダイアグノデントやDファインダを利用してのむし歯進行度チェック・・衛生士が注意して観察している歯や、気になる部分にあててチェックします。
- フッ素塗布や仕上げのペーストの塗布・・強制ではありません。
- 本人及び保護者へ説明とホームケアのアドバイス
メインテナンスでは問診より、信頼関係で成り立っている「会話」を大切にしています。
今回診察室に入るところから取材したのですが、歯科衛生士の町田はずっとAちゃんに話しかけていました。
受験生のAちゃんに「受ける学校は決めたの?」「眠れてる?」など、彼女自身のことをよく聞いていました。
その返事や表情の中から、ストレスがたまっているようだ、口が乾燥しているようだなど、見極めていきます。
そこで今回は染め出しはしないで(歯磨きが上手なのでいつも歯に色がつきません。)唾液腺のマッサージをしていました。
耳の下辺りを指でマッサージするとだ液が出るので、むし歯予防にもなるし、リラックス効果もあるそうです。
ここで交換神経と副交感神経の話もしてました。今はピンとこなくても、今後役に立つ、意外と大切な話です。
また、前回のカルテを見ながら、顎の具合とマウスピースの装着頻度を確認し、勉強中も付けていると良いとアドバイスしていました。
集中すると歯を食いしばってしまうことがありますので、その予防になります。
歯科専用の機械を使ってクリーニングをします。ここでも日常生活の中からのアドバイスが重要になってきます。
コントラという機械で歯の表面をつるつるに磨きます。甘い物の摂取が多いとベトベトしてるそうです。
そうすると「甘い物は取っていないです・・」から「ココアが美味しく感じて・・」と変化するので、「じゃあ、ココアは一度に飲み干そう。」と、アドバイスが出来ます。
リラックスできるものをやめさせてるのではなくて、上手に取り入れる方法を提案します。
勉強中に何時間もかけて甘い物を摂ると、むし歯や歯周炎になりやすくなってしまうのです。
次にエアブラシという先に小さなブラシがついた機械で、歯の列溝(咬み合う部分の溝)をきれいにします。
奥歯などは、複雑に溝があり、前歯の後ろにも溝がある場合があります。ここは磨きづらいので、町田が丁寧に磨いていきます。
そして、フロスを通します。フロスがぼそぼそと引っかかったら虫歯の疑いがありますが、Aちゃんはすいすいと通りました。
歯医者さんでやってもらうと、歯の横をしっかりこすっている感じが分かるそうです。ここでうがいをして、一段落。歯がすーっとするみたいですって。
規格性のあるスライド撮影、ダイアグノデントによるむし歯のチェック。毎回行うので変化がよく分かります。
きれいにクリーニングした歯の写真を撮ります。高校生なので、撮影のお手伝いは自分です。小さなお子さんや大人の方はスタッフがお口を引っ張るお手伝いをします。
大きい鏡を入れるのが苦手で「おえっ」となる人(嘔吐反射)は、無理をしないで教えてください。
ダイアグノデントでは、歯の溝の深さを測っています。数値が30以上になると虫歯の疑いがあります。
Aちゃんは右下の歯が前回数値が36だったのに69に上がりました。
Aちゃんは、「食欲がなくて、なんとなくココアを飲んでるかも・・」と。
受検のプレッシャー、焦りがストレスになっているのかもしれないと推測して、
「ゆっくりお風呂に入ったり、音楽を聴いてリラックスすることも大事。勉強しなきゃと思い続けていると辛いよ。Aちゃんならメリハリ付けてお勉強した方が、効率よくなると思うよ」
と、さりげなく伝えていました。
歯の磨き方だけを指導するのではなく、Aちゃんの背景を見て、生活のちょっととしたアドバイスをする。これで少しでも気持ちに余裕を持ってもらい、リラックスできるようにします。
最後に高濃度のフッ素塗布を3~4分(強制ではありません)。この短い時間に、町田はスライドをiPadに取り込んだり、カルテを記入したりします。
患者と保護者へのコミュニケーションとホームケアのアドバイス
大きい子で、問題が無ければ本人にだけに伝えることもありますが、気になる部分がある場合は保護者の方に伝えます。
iPadに取り込んだお口の写真を見せながら、今回は数値が69に上がってしまった歯について、伝えていました。そして、歯磨きがとても上手だと言うこと、唾液腺のマッサージの方法もお話ししていました。
でも、Aちゃんとの会話の内容はほとんど話しません。例えば悩みを話してもらったら、一緒に悩みますがお家の方に伝えることはありません。
それは信頼関係を崩すことになるからです。
説明をして質問などに答えた後、次回のメインテナンスを決めます。これも、卒業式や入学式を考えて臨機応変に対応します。
メインテナンスの中で生まれるコミュニケーションからわかる個人に合わせた的確なアドバイスが重要。
今回高校生のAちゃんに取材させてもらいました。ありがとうございます。
私の感想です。会話の多いこと!他のお子さんの時もそうなのですが、会話の中に大切なキーワードがたくさんあるようです。
それを見過ごさず、なぜ、ダイアグノデントの数値が上がったか、甘い物をほしがるのかを見極め、ケアの方法を変えていかないと真の予防にはならないと感じました。
「甘い物は食べないで」は誰でも言えます。でも受験というプレッシャーと非日常の中で、リラックスをさせることが必要と、町田は考えたのだと思います。
そこで、甘いのものの取り方、気持ちを休める方法を伝え、甘い物に依存しないよう軌道修正をしようとしたのだと思います。
患者さんごとに環境が違う限り、同じアドバイスは意味が無いのです。その子にぴったり合ったアドバイスを、負担にならないよう、効率が良いように伝えることが、町田をはじめ、あおき矯正歯科の歯科衛生士には出来るのだと改めて感じました。